リモートワークの通信費は、会社が必ず全額負担する、または従業員が必ず負担するとは決まっていません。雇用契約、就業規則、テレワーク規程、会社との個別の合意によって決まります。
ただし、業務に必要なインターネット回線や通信機器の費用を従業員が負担する場合は、負担の範囲や計算方法を会社が明確にしておく必要があります。まずは就業規則やテレワーク規程で、通信費の扱いを確認しましょう。
リモートワークの通信費は会社負担か、従業員負担か
判断の基本は、業務のために新たに発生した費用か、もともと個人が生活のために支払っている費用かです。
| 費用の例 | 一般的な扱い | 確認する条件 |
|---|---|---|
| 会社が業務用に契約させた回線 | 会社負担になりやすい | 契約者、支払い方法、解約時の扱い |
| 自宅のインターネット料金 | 会社負担、手当、従業員負担のいずれもあり得る | 業務利用分の計算方法や定額手当の有無 |
| スマートフォンの通信料金 | 業務利用分のみ会社負担とする場合がある | 会社支給端末か私物端末か、利用割合 |
| 通信量の追加料金 | 業務が原因なら会社負担になる可能性がある | 追加料金の発生原因と事前承認の有無 |
| Web会議用の機器や有料サービス | 業務に必要なら会社負担になりやすい | 購入・契約の承認を受けているか |
上の表は一般的な判断の目安です。実際の負担者は、会社の規程や合意によって異なります。特に、自宅のインターネット回線のように私生活でも使う費用は、全額ではなく一部のみを会社が負担することがあります。
会社負担にする場合の主な方法
リモートワークの通信費を会社が負担する方法は、主に「実費精算」「通信手当」「会社による直接契約」の3つです。
実際に使った分を精算する
従業員がいったん支払い、業務に使った分を会社へ申請する方法です。通信料の明細や領収書、業務で使った期間などをもとに精算します。
実費に近い金額を精算しやすい一方、毎月の申請や業務利用分の計算が必要です。私用と業務用を分けられる料金プランでは、業務利用分を確認しやすくなります。
毎月一定額の通信手当を支給する
会社が毎月一定額を「在宅勤務手当」「通信手当」などとして支給する方法です。申請の手間を減らせる反面、実際の通信費より手当が多い場合や少ない場合があります。
手当の金額だけでなく、通信費以外の費用を含むのか、出社が多い月も支給されるのか、入社・休職・退職月はどう扱うのかも確認が必要です。
会社が回線や端末を用意する
会社が業務用のモバイルルーター、スマートフォン、インターネット回線などを契約し、従業員に貸与する方法です。業務と私用の区別がしやすい一方、利用場所や通信量に制限が設けられることがあります。
従業員に通信費を負担させる場合の注意点
会社がリモートワークに必要な通信費を従業員に負担させる場合は、誰が、どの費用を、どの範囲で負担するのかを明確にしておくことが重要です。
労働基準法では、労働者に作業用品などの費用を負担させる定めを就業規則に記載することが求められています。通信費がこのような労働者負担の費用に当たるかは、費用の内容や運用によって判断されるため、会社は通信費の扱いを就業規則やテレワーク規程などで確認できる状態にしておく必要があります。
就業規則に記載がある場合でも、実際の負担範囲が不明確なら、次の点を会社へ確認してください。
- 自宅のインターネット料金を全額、定額、業務利用分のどれで扱うか
- スマートフォンの通信費や通話料を含むか
- 通信量の追加料金が発生した場合に誰が負担するか
- 通信手当と実費精算を併用できるか
- 機器の購入費や故障時の費用を誰が負担するか
- 費用を申請する期限と、必要な証拠書類
自宅のインターネット料金はどのように分けるのか
自宅の回線を家族や私用でも使っている場合、業務利用分だけを会社負担とする運用があります。分け方に全国共通の計算式があるわけではないため、会社が定めた方法を確認する必要があります。
例えば、会社が「在宅勤務日数に応じて一定割合を負担する」と定めている場合は、その割合に従います。会社の定めがないのに、従業員が独自に全額を請求しても認められるとは限りません。
一方、会社から業務専用の回線契約を指示された場合や、業務のために追加の通信契約が必要になった場合は、通常の私用分とは分けて扱う必要があります。契約前に、会社の承認と費用負担を確認しておくとトラブルを避けやすくなります。
通信費を請求する前に確認する手順
会社の負担が不明な場合は、次の順番で確認します。
- 雇用契約書、就業規則、テレワーク規程、在宅勤務の案内を確認する。
- 「通信費」「在宅勤務手当」「費用負担」「経費精算」などの項目を探す。
- 自宅の回線、スマートフォン、追加通信料、機器代のどれが対象かを分ける。
- 定額手当か実費精算か、申請期限と必要書類を確認する。
- 規程に書かれていない場合は、上司や人事・総務へ書面やメールで確認する。
- 会社の承認を得てから、新しい回線契約や機器の購入を行う。
確認するときは、「リモートワークで使用する自宅回線の料金は、どの方法で精算できますか」のように、対象の費用を具体的に書くと回答を得やすくなります。規程の記載と会社からの説明が異なる場合は、規程のどの部分が適用されるのかも確認してください。
会社が通信費を負担してくれないときはどうするか
会社が負担しないことだけで、直ちに違法と判断できるわけではありません。通信費の負担について、雇用契約や就業規則でどのように定められているかが重要です。
ただし、会社が業務上必要な契約や費用を指示したにもかかわらず、事前の説明と異なる負担を求めている場合は、まず会社へ事実関係を確認してください。勤務日数、通信費の明細、会社からの指示、これまでの申請結果などを記録しておくと、話し合いの材料になります。
説明を受けても解決しない場合は、社内の人事・総務、労働組合、地域の労働相談窓口などに相談する方法があります。給与から費用を一方的に差し引くなど、別の問題がある場合は、通信費だけでなく賃金の扱いも含めて確認してください。
リモートワークの通信費を判断するポイント
通信費の負担者は、会社の規程と、業務のために必要になった費用の範囲で決まります。自宅回線のように私用と共用する費用は、定額手当や一定割合での精算になることがあります。
最初に確認するのは、就業規則やテレワーク規程の「費用負担」「通信費」「在宅勤務手当」の項目です。記載がない場合や内容があいまいな場合は、契約や機器の購入を先に進めず、会社へ対象費用と精算方法を確認してください。







